2012年7月25日水曜日

相互監視システムとしてのインターネット


注:喰うということと攻撃するということはとてもよくにている

帰り道、夕食をつくって家で待つ人々がある
その夕食を待ちきれないがために
歩いて五分の坂道
総菜屋に駆け込むのである
そうして白い袋を
盗品のように鞄へ隠しながら
小さな物陰を探すのである
対して大きな場所でなくていい
この肉を口に詰め込むだけでいい
家まではあと五分
家まではあと五分
あまり遠いと家人に疑問をもたせる
疑問をもたれてしまう
そして物陰で
詰め込む肉を
噛まず飲み込む
腹にいれるためだけに
一目を避けられるなら
親しい人の眼を避けられるならどこでもよい
袋は帰り際に棄ててしまえばよい
そしてきれいに口をぬぐって
そうすれば何もなかったことになる
家に帰れば、
茶碗にこんもりと盛られたあたたかい白米
ネギの浮いたみそ汁
微笑する家人に微笑を返して、
いただきますと彼はつぶやくが
残る証拠は腹の周りに蓄積していく
肉体は裏切りを記憶している
それでもなおつめこまねばならない肉のかたまりに
悪意と憎悪をひたすら込めながら、
慣れた街の片隅、
自分の部屋でもないのに
小さく隠れて
毎日
毎日毎晩
私たちは自分の喰う肉を憎んでいる
私たちは他人が肉を喰うのを蔑みたい
その現場を押さえて
口の端から食べ滓をこぼした
立ち尽くす
彼ないし彼女を
憎みたい

幸福な夕食のある家に
帰る後ろめたさを覆い隠すのに必死で
指を指して笑いたい。